2011.06.21.Tue(19:25)
『さや侍』(2011)監督:松本人志

これは相当に「アカン」と僕は思います。
「アカンくない」ことはなく「タイホー!」レベル。
いやまあ『アカン警察』でいうところの。映画の中の言葉でいえば「切腹を申しつける!」である。
ただ観る前にだいたい予想していた感じにもなっていて、まあ、その、なんというか。
『大日本人』『しんぼる』という前2作に関しては、評価はともあれ、わりと擁護したい部分が多分にあったんだよなあ、個人的には。
部分的に好きな部分もチラホラあって、少なくとも観てて退屈はしなかった。
でもこの『さや侍』、中盤、退屈してしまいました。
笑わせたいのか?
メッセージを伝えたいのか?
メッセージの部分を端的に伝えたいから笑いの部分はたいして面白くなくてもいいのか?
つか、あの三十日の行のひとつひとつを本当に面白いと思って撮ってるのか?
もう?だらけですわ。
???????? なぜ?の嵐 by 吉沢秋絵、とくだらん軽口を叩きたくなるくらい。
メッセージというのは、少なくとも表層的にわかりやすいレベルでのものが二つあって、まずひとつはタイトルにも表されている「プライド」。
云うなれば「芸人のプライド」というものを、野見さんのさや侍に託して描いたと。
もうひとつは、ラストシーンで「詞」によってあまりにも直接的に表明される「父と娘」、親と子の繋がりに関するもの。
で、そのどちらにしてもあまりにも矮小ではないか?
いや、矮小という言葉が正確でなければ、卑近ではないか?
松本人志からそんなメッセージをわざわざ表明してもらってもなあ。
僕はどちらかというと松本信者だと思うけど、いや、本当にそう思う。
松ちゃん、こりゃないよ。
でも、割とそういうところあるよね、とも一方では判ってるんだけども。
まだ若い時分に書かれた「遺書」とかでの言動をまっすぐに受けとめてきた我々は、後年何度裏切られてきたことか。
結婚して娘が出来て子煩悩になっちゃうのも半分ギャグで半分マジなんだろう。
これまでの映画も、結局すべて自分のことしか語っていない、という見方もできるだろう。
それでも今回のそれはあまりにも「卑近」なような気がして。
『アカン警察』で東野が松ちゃんに「子煩悩反対!」と突っ込んでいたが、まさしくそんな思いである。
ただラストのシークエンス、「詞」に託されたメッセージの内容はともかく、その描き方だけはちょっとだけグッときた。
彼を起用したことでなんとか締まったようにも思う。
一方でポカンとする向きもあるであろう(ふたつの見地から)ことも充分に理解できるが、自分はアリだと思った。
いやまあ、自分としては全然笑えなかったのが一番大きいのかな。ショックが。
やっぱ笑いたい、です。ワハハでもいいし、クスリでも、ニヤリでもいい。
野見氏に関しては、少なくとも衣装をつけて演技をするというシチュエーションに置かれたことで、我々観客がある程度身構えてしまうということが、素の状態に近かった筈の『働くおっさん人形』とかとどう違う風に作用したのか。
蛇足の話なんだけど、僕が松本人志で一番凄いと思うのはその瞬発力。
その場の流れを瞬時に判断しつつ最も効果的な笑いに変える力。
その力は今は『HEY!HEY!HEY!』や『DX』でのトークでのコメントとして一番見えやすくなっているんだけど。
だから松ちゃんの独特の感性のコント(「とかげのおっさん」とか)をそれほど崇め奉っているわけでもない。
それでもやはり、やるんだったらそこが観たいと思ってしまうんだよなあ。
『しんぼる』や『大日本人』でも独特の感性の笑いの要素がちゃんとあって、ゲラゲラ笑ったわけではないがギャグに関してはすべてがつまらないとは思わなかった。
『さや侍』に関してはその意味では没個性的な笑いしかなかったような気がして、そこが一番の不満。
だって映画では、僕の好きな「瞬発力」の部分は楽しめないわけだから。ましてや今回、本人が演じ手でもないわけだし。
でもたぶん次回作も観るんだろうなあ。
いや、なんかグダグダのまとまらぬ感想ですまぬ。
2011.06.07.Tue(19:10)
『スペースポリス』(2004)監督:渡辺一志
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ザラついた画面のチープな映像が、作品世界と合っているような合っていないような終始むずがゆい気持ちで観終えた。
内容は絵にかいたようなB級のSFコメディといってもいいだろう。
何の予備知識もなしに見始めたとして、どこに重点をおいて観ればいいのかとまどってしまうようなそんな作品。
ひとつの手掛かりとして考えられるのは、目黒祐樹はじめ板尾創路、鳥肌実、杉作J太郎等のヒトクセある多彩な出演陣なのだが、それぞれの見せ場もあるようなないような。
実はこの監督に関しては、処女作の『19』を観なければならないとずっと思っていて未だ果たせていない。
それを観てからかなあ、この監督に対する評価は。
2011.05.31.Tue(19:15)
『桂子ですけど』(1995)監督:園子温
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『俺は園子温だ』(1985)監督:園子温
監督デビューのきっかけとなったというPFF(ぴあフィルムフェスティバル)入選作。つまり自主製作作品だ。
自身の22歳の誕生日までの3週間をフラグメントに描いてるのだが、80年代半ば頃の自主映画ってこんな感じだったよなあと懐かしく思う一方で、80年代チックな女の子に妙なテンションと甲高い声で執拗に意味不明のインタビューをし続けたり、頭を刈られながら文字通りギャアギャア叫びわめいたりする若き監督自身の姿にいささか辟易。
ある種殴ってやろうかと思うぐらい鬱陶しく感じてしまうのだが、一方ではなんかこういうところもある人なんだろうなあ、とヘンに納得もしてしまったり。
『桂子ですけど』(1995)監督:園子温
『俺は園子温だ』を女性を主人公としてきちんと撮り直したかのような作品。
自主製作映画レベルは抜け出しているが、同様に筋らしい筋もなく、実験映画的でもあるけれどさほど刺激的である部分もないので、この主人公の女性にかなりのなんらかの興味を抱かなければ60分見続けるのはツライか。
習作、といったところだろうか。
2011.04.28.Thu(19:05)
『女番長 野良猫ロック』(1970)監督:長谷部安春
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シリーズ一作目。
70年当時の新宿西口を中心とした風俗や、懐かしいメンツ(范文雀、和田浩二、十勝花子ら)に現在に至るトップスター(和田アキ子、梶芽衣子、藤竜也ら)の若々しい姿と当時のスマートなファッション等、みどころは多いが、お話自体はちょっと物足りない。
バイクのアッコとバギーの藤竜也による新宿地下街をも股にかけたカーチェイスがショボさ含めてなかなか見応えあり。
そしてモップスをバックに従えて唄う和田アキ子のライブシーンもみどころのひとつと言えよう。これは本気でカッコイイ。
ま、よりカッコイイのは梶芽衣子様に間違いないんだが。
あとアンドレ・カンドレ(井上陽水)も出てるよん。
しかしこれ東映作品と思い込んでたが日活作品だったね。実際観てみると、質感的にも違いがわかる。
2011.04.09.Sat(19:05)
『ゾンビ(米国劇場公開版)』(1978)監督:ジョージ・A・ロメロ
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.....こ、これが「映画秘宝」オールタイムベスト第一位....。そうですか....。
ゾンビビギナーとしては満を持して、という気持ちで観たのだけども、ううむ、想像力が貧弱なせいかあまり面白さがわからなかった。
いや、つまらん、とも言い切れんのだけど、どうも面白ポイントをつかみきれん...。
期待しすぎたのか?
とかぶつぶつTwitterで呟いていたら、「スプラッタとかホラーな文脈とはちょっと違う感じ」の見方を教えられてやっと少し胸に落ちた感じ。
もっとフラットに観ればよかったかな。
「ゆるやかな終末感」を楽しむというご意見もなるほどと勉強になった。
また違うバージョンのも観てみよう。
2011.04.06.Wed(19:25)
『宇宙からのメッセージ』(1980)監督:深作欣二
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いやあ、聞きしに勝る大変な映画だなこりゃ、いろいろと。
広く知られているように「スターウォーズブーム」に当て込んでいろいろ意識して作られた作品だが、キャストからセットからギャグから何もかも根っからの東映印。岩に波がザッパーンですよ。
結果として現前したのは「スターウォーズ」どころか「キャプテンウルトラ」の宇宙だろこれって代物。
当時中学生の僕は、野田元帥のノベライゼーション(というかオリジナル)文庫だけ読んで楽しみにしつつも、結局実際の映画は観なかったんだよなあ。
てわけでン十年振りの邂逅と相成ったわけだが、そのまま出会わない方がよかったかもw。
あ、TVシリーズもあったけどあれは映画版とはまったくの別物であったということも改めてわかった。
しかしクライマックスが千葉ちゃんと成田三樹夫のチャンバラって、柳生一族かよ!
丹波センセイもいつもながらの立ち位置だし。(「仁義なき戦いシリーズ」でもお馴染みの写真での登場シーンも含み)
他にも、天本英世は普通に老母として出てくるし。サンダー杉山とかもう泣けてくるw。
大阪弁のチンピラ・ジャック役の岡部正純は大抜擢だなあ、全然知らない人だ、と思っていたら、川谷拓三の代役だったのか。なるほど。
2011.04.06.Wed(19:10)
『ドラゴン危機一発』(1971)監督: ロー・ウェイ
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「社長は主任と戦ってるわ」(クライマックス前のとあるセリフ)
www。いやいやいや。
冒頭からして肉まんのタダ喰いに端を発する乱闘劇であるとか、いろいろユルい作りではあるものの、そこを楽しめるほどのトンデモ映画というわけでもなし。
あれこれB級な作りではあるが、つまらない方のB級だなあ。
てことで、リーのアクションに目を瞠りたいところではあるが、差し挟まれる刃物とアンリアルな毒々しい血糊が趣きに水を差す。
アチョーという怪鳥音も後入れということがわかってがっかり。
次いこか。
2011.03.01.Tue(19:05)
『ミレニアム2 火と戯れる女』(2009)監督:ダニエル・アルフレッドソン
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1作目は劇場で観たが、2作目3作目は公開終了に間に合わなかった。
原作ではこの2作目が、3部作の中でもっとも緊迫したサスペンス&衝撃作となっており、かなり期待していたのだが、なんとも間延びした仕上がりに。
展開自体は割と忠実な作りなんだけど、筋を追いかけるだけに窮々としてしまっている感が漂っている。
なんか勿体ないなあ。
ハリウッドリメイクでのフィンチャーの手腕を逆に期待させる出来というか。
ま、ここまでつきあったから当然3も観るけどね。
2011.02.25.Fri(19:20)
『デューン砂の惑星』(1984)監督:デヴィッド・リンチ
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こ、これは....つ、つま...。
話の中抜きぶりが凄まじいし(いや原作読んでないよ。それでもそうとわかる)リンチっぽさみたいなものもあるにはあるけどそこだけをほじくり返してもなあという感じ。(たとえば、航海士とかね。好きだけど。)
いや、この作品を愛す向きもあろうので、これ以上あまりグダグダ云いたくはないのだけど、もっとグチャグチャだったらハマったかもしんない。
時間経てばじわじわ再見したくなるかなあ。
2011.02.22.Tue(19:20)
『下落合焼きとりムービー』(1979)監督:山本晋也
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山本晋也カントクの数少ない一般作の一本であり、所ジョージ主演、赤塚不二夫の面白グループ周辺の制作・出演陣。
当時から観たかったことは観たかったんだよなあ。
タモリ、柄本明&東京乾電池、ビジーフォー、アルフィー、たこ八郎等の30年前の姿が拝める。
予想どおり筋らしい筋はなく、ぶっちゃけ、それほど笑えるような所もない。
まあ我ながら最後までよくつき合ったと思うが、個人的にはあらんどろん(女性お笑い美女?トリオ)が懐かしかったかな。
往年の所ソングがひさびさに存分に聴けたのも楽しめた。