2011.05.31.Tue(19:20)
『アメリカの夜』(1973)監督:フランソワ・トリュフォー
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すべては映画のために。
あるいは、すべて映画のせい。
そんな映画である。
ジャクリーン・ビセットの美しさを惚れ惚れと眺め、凛としていた彼女が終盤....ってところがいいね。
トリュフォー自らが演ずる監督の新作映画撮影現場が舞台となっており、その撮影風景のさまざまなカットも興味深いし、そこで起きるひとつひとつのエピソードもなかなか面白いんだな。セリフを覚えられない中堅女優の話とか。
いわゆるメタ映画であり、タイトル(夜の場面を昼に撮影する技法のことをいうとのこと。フィルターを使ったりするらしい)の含意にみられる「現実を虚構で覆い隠す」なんてことを大上段に構えることなく、さりげなく描かれているところに好感を持った。
ラストでは、とある現実で起きた事件のせいでひとつのシーンを取り直すことになり、そのシーンを雪のセットに変えるという手法が選択される。
当然、現実に雪を降らすわけにもいかず、セットには大量の泡が散布されるのだが、それはスクリーンのこちら側からはまったく雪にしかみえない。
まさに「現実を虚構で多い隠した」わけだが、あれこれ難しく考えずとも楽しい映画として観ることができるので是非。
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2011.05.31.Tue(19:15)
『桂子ですけど』(1995)監督:園子温
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『俺は園子温だ』(1985)監督:園子温
監督デビューのきっかけとなったというPFF(ぴあフィルムフェスティバル)入選作。つまり自主製作作品だ。
自身の22歳の誕生日までの3週間をフラグメントに描いてるのだが、80年代半ば頃の自主映画ってこんな感じだったよなあと懐かしく思う一方で、80年代チックな女の子に妙なテンションと甲高い声で執拗に意味不明のインタビューをし続けたり、頭を刈られながら文字通りギャアギャア叫びわめいたりする若き監督自身の姿にいささか辟易。
ある種殴ってやろうかと思うぐらい鬱陶しく感じてしまうのだが、一方ではなんかこういうところもある人なんだろうなあ、とヘンに納得もしてしまったり。
『桂子ですけど』(1995)監督:園子温
『俺は園子温だ』を女性を主人公としてきちんと撮り直したかのような作品。
自主製作映画レベルは抜け出しているが、同様に筋らしい筋もなく、実験映画的でもあるけれどさほど刺激的である部分もないので、この主人公の女性にかなりのなんらかの興味を抱かなければ60分見続けるのはツライか。
習作、といったところだろうか。
2011.05.31.Tue(19:10)
『ブルース・ブラザース』(1980)監督:ジョン・ランディス
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永年観たかった作品のひとつ。
じゃあ早く観ろよ、ということなんだけども、そこはまあ。
いまや伝説のジョン・ベルーシとダン・エイクロイドのコンビだけでなく、ジェームス・ブラウン、キャブ・キャロウェイ、アレサ・フランクリン、レイ・チャールズ、チャカ・カーンなんて大御所達が、役つきで次々と登場するのも見どころのひとつ。
もちろん出てくるだけじゃなくって、その都度しっかりとブッチギリの歌声を聴かせてくれる。
そんなわけで、ゴキゲンなミュージックとハチャメチャなカースタントで、途中まではおーやっとるやっとると鷹揚に観ていたが、終盤、どんどんトンデモない展開になって画面に目が釘づけ。
明らかにもういろいろヤリ過ぎていてさらに好感度UP。
物語の内容的には上映時間2時間半もいらない筈だが、その過剰な部分が楽しいのでオールオッケーなのだ。
興奮と大満足のうちに観終えることができた。これは何度観ても楽しいだろうなあ。
2011.05.31.Tue(19:05)
『Strange Circus 奇妙なサーカス』(2005)監督:園子温
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宮崎ますみ主演のエロチックな作品として当時少し話題になったことを覚えている。
かなりドギツイ要素(近親相姦・児童虐待・覗き・身体改造・四肢切断等)が詰め込まれており、監督特有のモチーフ(キリスト教とかサークル的なものとか)などもいくつか確認できるものの、ある種『冷たい熱帯魚』以上に観る者を選ぶ作品となっている。
個人的にはそうした要素よりも、かなりメインの役どころをこなすいしだ壱成一点が気色悪くて物語に集中できず、全体の仕上がりとしてもイマイチだったかなという感想。
ただ、インモラルな父親を演じた大口広司が異様にリアルで出色の存在感であった。もう亡くなっているんだ
2011.05.31.Tue(19:00)
『ユメ十夜』(2007)監督:清水厚、他
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夏目漱石の「夢十夜」を原作とした11人の監督によるオムニバス。
「こんな夢を見た」というアレである。
参加した監督は、実相寺昭雄、市川崑、清水崇、清水厚、豊島圭介、松尾スズキ、天野喜孝・河原真明、山下敦弘、西川美和、山口雄大というなかなかに豪華かつ興味深い顔ぶれ。
久世光彦脚本・実相寺昭雄監督・小泉今日子主演 という第一夜はそのメンツだけでそそる。
個人的に期待していた西川美和作にはもうひとつノレなかったのだが(でも一定以上のレベルとは思う)、バラエティという意味では皆それぞれ健闘している。
各編に重厚で幻想的な雰囲気を期待するとちょっと失望するかもだが、ま、オムニバスなんで各監督の個性の差を愉しむべきかな、と。
なかでは、清水崇作品がやっぱりちゃんとホラーしてたのと、松尾スズキ作品が演劇チックだがきちんと映画になっていたのが記憶に残った。
あとは山口雄大作品をこれで初めて観たが、評価はさておくとしても他の作品も是非観てみたくなった。なるほどこういう感じね。
2011.05.18.Wed(23:45)
『パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド』(2007)監督:ゴア・ヴァービンスキー
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3時間弱の巨編ですよ。
娯楽作であることには間違いないのだが、話がクルクル変わってわかりにくいのお。
なんかひとつひとつのシチュエーションがじっくり処理されぬまま、ガンガン次の展開に移っていくので、めまぐるしいばかりか状況の把握に難儀する。
敵味方入り乱れるっていうか、キミはいったい今どういう立場で何を目的に行動してるの? ってのがわかりにくいので、もの凄くいろんな娯楽要素があれこれ詰め込まれ濃密な内容になっているにも関わらず、観ていて散漫な印象となる。
これだけの時間なのでさすがに中だるみはするけど、大詰めのバトルはアトラクション要素を巧く取り入れさすがに見応えあり。
せっかくのキース・リチャーズの出演が霞んでしまうぐらいのごった煮感ではあったが、ま、カメオ出演みたいなもんだからそれでいいのか。
というわけで三部作観きったわけだが、このシリーズ嫌いじゃないですよ。
集中して手に汗握って楽しむというよりは、なんか楽しげだなあと思いつつふわふわ愉しむという感じだけど。
で、第4作に対してもそれぐらいの期待。
2011.05.18.Wed(21:05)
『ブラック・スワン』(2010)監督:ダーレン・アロノフスキー
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話題作。
おいおいそこまで見せちゃっていいのかよ、という予告編通りではあるのだが、それから想像した内容とは少し異なっていた。
往年の少女漫画におけるバレエものにあるような「プリマドンナが継母やライバルに妬まれてイジメにあい云々」という内容のイメージを勝手に膨らませていたのだが、その枠組みを上手く慣用しつつ(実際そうみえる描写もいくつも垣間見える)、実は彼女に誰も嫌がらせをしてないし妬んでもいない(かもしれない)というところがミソかと。
「可我見」であるところの鏡のカットの多用によってその意図はある意味明らかなのだが、それ以外にも、主人公を抑圧する存在である母や主役の座を狙うかのようにみえるライバルという他者が実は自分の投影にほかならないのでは、と思わせる演出が散見される。
本来ナタリー・ポートマンとそれほど似ているとは思えない、母役のバーバラ・ハーシーやライバル役のミラ・キュニスを一瞬ハッとするほどナタリーに見紛うカットが意識的に挿入されているのだ。
そのようなカットや演出がいろいろな先行作から慣用されているという指摘はあちこちで見かけたが、心理的なサスペンス要素を持続させつつ、誰もが知る(舞台はちゃんと観たことない人でも、おおまかなストーリーや曲自体はお馴染みの)「白鳥の湖」という名作バレエをうまく絡めて2時間を飽きさせずに観させる構成とラストシーンに至る盛り上げの巧さがこの映画の見どころであろう。
2011.05.18.Wed(21:00)
『デスペラード』(1995)監督:ロバート・ロドリゲス
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エル・マリアッチ3部作の2作目。
主人公のキャストが変わっちゃってるんだが、結果オーライ。
ていうかそのことにより作品のテイストも変化。
エル・マリアッチとしては過去に影を持つ復讐者という役どころの筈だが、アントニオ・バンデラスが漂わせる陽性な持ち味(根アカな雰囲気)のおかげで、より馬鹿っぽく、というと語弊があるが、ワタクシメの好きな方向に寄ってきた感。
お話自体はある意味メチャクチャなんだが、導入部から巧く観る者を惹き込み、以降も今回は筋書き自体からして興味を繋ぐ。
常連、ダニー・トレホの怪演(というか怪存在?)がたまらんね。
前作の主演俳優もアホな役で好演。
お気楽に観ることができ、それなりに観応えも得られるアクション映画だ。
2011.05.17.Tue(19:25)
『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』(2010)監督:エドガー・ライト
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エドガー・ライト作品を急遽おさらいして、ヲタク系に話題の劇場公開最新作を観に行った。
うむむむむ。
今回はコミックが原作となり、ファミコン等を初めとする往年のコンピューターゲームの要素をスパイスに散りばめた作品となっている。
相変わらず音楽の使い方にセンスがあり、カット繋ぎのテンポも良いのだが、これまでのエドガー・ライト作品とは別物。
バトルシーンを初めとして爽快感があるはずの演出だと思うが、なんだかモヤモヤばかり残るのは、主人公であるスコットの行動に感情移入できないからだろうか?
こいつイヤな奴じゃん、単にw。
原作でもそうなのか、と梗概とかをネットでチラ見したりするうちに、スコットがマイケル・セラってのはミス・キャストじゃないだろうかとふと。
スコットは結局どうやらお調子者のちょいモテ野郎ってことらしいので、マイケル・セラに我々が(勝手に)持っている『朴訥な童貞野郎』というイメージと異なるんだよな。
同じようにスコットと付き合ってフられるチャイニーズの女子高生ナイヴズも原作(の絵)に比べて、演じるエレン・ウォンが可愛すぎる。
で、彼女の扱いがヒドいんだな、またこれが。
ラストなんて、なんだあれは! と、スコットに対して憤りを感じて、結果として映画そのものに不満を持ちかねない。
チャイニーズ蔑視か、とおかど違いの疑義を差し挟みたくなるほどである。
他にも、出てくる女子は皆好みであった。
終始微妙な表情(蠱惑的とも言い難い)のラモーナは、演じるメアリー・エリザベス・ウィンステッドの素顔とは異なり、マンガの表情に近い。
『マイレージ・マイライフ』で好演していたアナ・ケンドリックはここでは、割と単純に可愛さを振りまいている。
男性陣では、スコットの同居人のオカマ役のキーラン・カルキン(マコーレの弟)が、なかなか良かった。
と、あれこれ見どころはあるのだが、結果的には自分にはハマりきらなかったかな。
ギャグもどうなんだろう? 前作までと比べても小粒というか。
ネタがヲタク過ぎるとかそういうことでもないような気がするのだがどうか。
しかもファミコン感覚を取り入れた画面構成ってのも、いまさらという気もしてなんだかダサ.....、いやいや、ま、それなりに楽しんだからいいけど。
ストーリーの骨組みの重要な要素となっている元カレとのバトルだが、それぞれ工夫を凝らされてるにも関わらず、いまひとつおもしろくないってのが致命的か。
繰り返されるたびに飽きてくるってのは、『エンジェル・ウォーズ』と同じ病かもしれんのお。
2011.05.17.Tue(19:20)
『ホット・ファズ ー俺たちスーパーポリスメン!-』(2007)監督:エドガー・ライト
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エドガー・ライトの前作。
これも面白い。
カット繋ぎのセンスや音楽の使い方がやはり好みだなあ。
冒頭からアダム・アント、XTC、キンクス、T-REXと続いてニヤリ。
正直、ネタバレしてからの展開はどうか、とも思うが、サイモン・ペグとニック・フロストのコンビが好きだから許す!
このコンビの作品がもっと観たいなあ、と思っていたら既に計画があるようで。(『PAUL』 という SF コメディー。エドガー・ライトは『スコット・ピルグリム~』を撮っていたので不参加らしい。)
ネタバレしてからの展開に疑義を差し挟んだが、もちろんこの映画でやりたかったのはそこだ、ということも重々承知しているし、その点も含んで楽しんで観たんだけどね。
DVDの未公開シーンを観ると結構重要なシーンやギャグがバッサリ削られてて、スマートにはなっていると思えるものの、いささか説明不足になってるようにも思える。フード族のところとかね。
『ショーン・オブ・ザ・デッド』に比べると、サイモンの役柄がくそ真面目ということもあってハッチャケ度は控えめに感じる部分もあるが、アクション映画やポリスストーリー全般への敬愛に満ちた視線もそこかしこに感じられ、観終えて気持ちの良い快作。