2010.11.12.Fri(19:00)
『十三人の刺客』(2010)監督:三池崇史

早い時期からオリジナル版も予習して楽しみに待っていたのだが、公開開始になってもなかなかタイミングが合わず、いつ公開終了になるかヒヤヒヤしていたところ、遅ればせながらやっと観ることができた。
オリジナル版の重厚な幕開けに情念の部分を過分に盛りこんでおり、それはそれで監督のイロも出た部分でなかなか良い。
エピソードを足して暴君の残虐性を強調することで、そのことを決意するに至る理由がくっきりと描かれる。
ただその後、決起してから後半部の殺陣に至るまでの部分にやや不満がないではない。
十三人が集結する描写がいささかあっさり気味なのはオリジナルもそうであり、それは時間の制約もある以上致し方ない部分でもあろうが、落合宿における奇襲の描写までもあっさりだったのは少し拍子抜け。
前作では、準備をコツコツと進め工夫を凝らした仕掛けでじりじり敵を追い詰めていくという描写が秀逸だったのでそう思ってしまうのだが。
いや、あっさりというか描写自体はずっと派手になってるわけ。
爆薬をふんだんに使って、敵の数も増やして。
だから、見応えが増したという見方もできるんだけど、淡々とした作戦進行という雰囲気の面白さは失われたのだな。
で、最初にドッカンドッカンとやっておいて、自らこっから先はチャンバラでいくでぇと見栄を切るところはちょっと違和感。そのまま奇襲でいけるとこまでいけばいいのに、と。
ま、その見栄の切り方自体は格好いいんだけどね。
とかごちゃごちゃいいつつも、オリジナル版ともまたひと味違ったあの圧巻のチャンバラを見せつけられては、まあ、文句はないか。
自分達はほとんど汚れずに最後のいい所だけズズィと出てきたオリジナル版の千恵蔵とアラカンに比して、役所広司と松方弘樹は血や泥にまみれてボロボロになって闘うのだ。燃える!
(「斬って斬って斬りまく」った結果、どう数えても敵の数が二百や三百では合わないような気がするのは、まあいいかw。)
あと、ウワサ通り稲垣吾郎はよくやっている。彼だというキャスティングを聞いた時に、これは面白いところを持ってきたぞ、ハマるのではと思ったが、まさに配役の妙であって、例えば他のスマップメンバーではこの役は考えられない。
冷静に考えればほとんどリアルではない役どころなのだが、描き方が秀逸で人物像がクッキリしている。
前作での菅貫太郎にあった「愚かな殿」というイメージはない。
愚かであるが故の狂気的行動ではなく、稲垣版斉韶は確信的に行動する。
いやだから、狂気ですらないかもしれない。
常人とは思いっきりずれているだけ。
そのように生まれついた者が持つ不協和音を稲垣吾郎は見事に体現しているキャラクターであるといえる。
最後の最後まで見せ場を作った。
141分の長丁場、とにかく飽きずに楽しめた。そしてスクリーンで観ることができてよかった。
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