2011.08.04.Thu(23:07)
『あぜ道のダンディ』(2011)監督:石井裕也

お気に入りの石井監督の最新作。
今回、監督特有の演出(日常でありながらややハズれた雰囲気や抑揚を抑えた台詞まわし等)が陰を潜めているのは、光石研と田口トモロヲという役者経験が長く力量ある俳優二人を主演に迎えた所以か、それとも作風の変化の兆しか。
その分これまでよりSOLIDな仕上がりになっているような。
それでも監督作品おなじみのモチーフ(排泄行為(物)、医療(健康)機器、東京の雑踏(に対する恐れ)、ダンス(または歌唱)、etc)はちゃんと登場してくるのが興味深い。
ただそれらはいつも以上に唐突で全体に馴染んでいない印象。
特に泣かせどころでのうさぎのダンスは、人情コメディとしてこの作品を捉えようとする向きにはどう受けとめられたのか。
ま、個人的にはニヤリとしたんだけど。
あと、監督よりも主人公コンビの年齢によほど近い身としては親父の描写が幾分類型過ぎて(プリクラぐらい知ってるでしょ50歳ぐらいならさあ)いささかこそばゆく居心地悪いのと、後半少しもたついた感じがするのが惜しい。
そうは云っても、ぐっとくる台詞・場面も多く、観ていて飽きない。
やっぱり好きな映画と云わざるを得ない。
キャストでは、主人公コンビはもちろん良いし(これはしみじみと本当に良いのだよ、うん)、息子役の『君と歩こう』に続いての登用の森岡龍がうまい。またその妹役の吉永淳も光を見せており、二人の今後も要チェックだ。
さらに、画面に登場するだけでにやけてしまう岩松了の医師は、今回ほぼまともな台詞しか言ってないのだが、どうにもうさんくさく見えるところがたいしたもの。
ほんとうに役者を「活かす」演出をするなあ、この監督は。
主題歌となった清 竜人の「ホモ・サピエンスはうたを歌う」もエンディングにバッチリハマった名曲。
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