2010.05.27.Thu(00:00)
『座頭市物語』(1962)監督:三隅研次
![]() | 座頭市物語 [DVD] (2003/09/18) 勝新太郎天知茂 商品詳細を見る |
見てて大変面白い一方、終始なんだか尻の座らない落ち着かない気分。
なんだろう、と考えていて、この物語に登場する人間関係がすべてどこかしらゆがんでおり、それがゴツゴツした印象を残しているのだと思い至る。
冒頭のシーンからしてひねくれている。
旅の途中ヤクザの親分に見初められ、誘われるままにその親分を訪ねてきた市が、やってくるなりイカサマ博打で子分衆から金を巻き上げると、そのやり口を疑い怒りをあらわにする子分衆に対し、めくらをバカにするなと逆ギレしてこんな子分を抱える親分もたいしたことないと悪態をついて出て行こうとする。
腹を立て、やっちまおうぜと子分が表に追って出たところ、帰ってきた親分と市が鉢合わせ。まあまあよう来なすったと丁重に迎え入れると、市は何事もなかったようにその家に草鞋を脱ぐことに。
親分はさきほど市にやり込められた子分にその一切の世話を命ずるのだが、その子分はちょっと微妙な表情を見せただけで、その後おとなしくその命に準じ、按摩の市に入念なマッサージを施したりしているのだ。
かといって、一方では親分も市のことを対立する組との抗争に利用しようとしているだけで、思いやりもうわべだけだ。
市を世話する子分には近くで小料理屋を営む妹がいるのだが、その関係性もけして温かいものではない。妹は友人の女性を孕ませたまま知らん顔の兄を憎々しげに追求するし、兄は兄でその妹を自分の兄貴分に売り渡そうとする。
また対立する組に用心棒として迎えられている天知茂扮する平手造酒と市の関係も妙だ。
互いにその腕を認めて尊敬し合って友情を育む二人が、やがてそれぞれが世話になっている対立する組の抗争に巻き込まれやむなく対決、というのが常道だろうに、直前で市は組から追い出されてしまい駆り出されることのないまま抗争が勃発し、対決の必然性の筋道を途中で断ち切ってしまわれる。
なのにそこにわざわざ市が現れ、結局、造酒と斬り合うのだ。
表立った理由をわざわざ消失させて男達が闘う理由。
造酒を斬った後の市の涙を眺めながら、そこに思いを馳せるのがこの少し奇妙な映画のみどころといっていいかもしれない。
北野映画順番鑑賞シリーズでまもなく巡ってくる『座頭市』に向けて、また公開を間近に控えた香取慎吾版に備えて観たわけだが、純粋に面白かったなあ。
そしてやはり慎吾が心配にw。真摯に取り組んでいるということで、観る前からあれこれ云うのはやめようと思っていたのだが、うーん、これは比較するなというのが無理だし...、ま、やめておこう。ひょっとして、ということもある。
スポンサーサイト
Comment
Trackback
| HOME |