2012.02.14.Tue(19:30)
『ヒミズ』(2012)監督:園子温

元々がインパクトあるマンガ原作を角度が違うインパクトで塗り替えた園子温印の一作。だがその園印インパクトが今回やや物足りないか。
その中でも一番グイグイ迫ってきたのは、父が子に対し、実に愛おしそうに存在否定の言葉を放つシーン。
父を演じる光石研が嬉しそうにやり倒し、カメラはどアップでその様子を映し出す。
園作品においては、ぼくはその箇所のようなわけのわからない情動が見たいのだ。
自身が街中を狂おしく走り回った初期作『自転車吐息』同様に主人公を街に解き放ち狂おしく徘徊させるわ、『愛のむきだし』でヒロインが聖書の一節を詠じたようにヒロインにヴィヨンの詩を詠じさせるわ、前作『恋の罪』に引き続き呼び込みセールのセリフをリフレインさせるわ、やってることはこれまでの園子温と変わらないのだが、「震災」なるものを取り込んでしまったがためにそこに「意味」が発生し、焦点がボヤけてる。
とは思うのだが、しかしあれも園作品に付随する夾雑物のひとつ、と思ってしまえば、まあ、そういうもんなのかな、と。
その意味ではあの程度の扱いにかえって「怒る」人がいるのもわかるし、原作ファンが鼻白むのも理解できるのだが、僕自身はマンガ原作もの映画としてはある意味評価に値するかも、という気はしている。
キャラも違うし雰囲気も違うし異なる部分は山ほどあるのだが、一方ではセリフやシーンがかなり忠実だったりもして、その原作の取り入れ具合とオリジナリティの付与具合が腑に落ちる出来。
原作どおりに映画化するのが、正解というわけではないという意味においてだが。
反対意見は認めるが、僕も原作読んで原作自体が好きになったものの一人でもある。
それでもラストはああせざるを得ないでしょう、「震災」を取りいれてしまった以上。好みは別として。
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